Re: Baidu Typeと親指シフト (@アニすじ)
コンピューターを使う作業で親指シフトをどのように位置づけるか。
http://anisuzi.blog81.fc2.com/blog-entry-65.html
Baidu Typeで親指シフト入力を行うことは、今のところ全くできないようです。
Googleに続いてBaidu (百度) も日本語入力プログラムを発表しました。私自身はGoogleもBiaduも検索ではしょっちゅう利用していますが、両方とも日本語入力プログラムは使ったことがありません。
今のところ両者とも正式に親指シフト入力をサポートしていませんし、ユーザーによるさまざまな実験でもうまくいったりだめだったりと結果は両方のようです。そんなわけで、今のところ様子見といったところで、正式対応されるのを期待しています。
立て続けに日本語入力プログラムの話題が出てきたこともあり、私はコンピューターを使った作業の中で日本語入力や親指シフトをどのように位置づけるべきかについて考えてみました。
技術的に複雑なシステムを見通しよく効率的に運用しようとする場合、何らかの構造化ないしモデル化をすることがあります。
例えば、コンピューターにおける通信機能を理解するために、必要な技術を階層構造にしたOSI参照モデルhttp://ja.wikipedia.org/wiki/OSI%E5%8F%82%E7%85%A7%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%ABというものがあります。
これは、各層間のインターフェースを定義することで、層間の互換性を維持することを目的としています。これがあると層内ではさまざまな技術が競争することで技術革新が促される効果が期待できます。
OSI参照モデルでは、コンピューターが持つべき通信機能を次の7層に分けています。
第7層 - アプリケーション層
第6層 - プレゼンテーション層
第5層 - セッション層
第4層 - トランスポート層
第3層 - ネットワーク層
第2層 - データリンク層
第1層 - 物理層
ここで気づくのは、下部にある層ほどインフラ的要素が強くなることです。
通信技術の実際の運用では、必ずしもこの構造に沿ったものになっているわけではないようですが、このように層別構造の概念を導入したことで、技術の開発は層の上下とのインターフェースの適合性だけ確保すれば良いので容易になることが期待されます。
これを真似して私は、コンピューターで文字入力が必要とされる作業(文字入力が必要ない作業とはどのようなものでしょう)について、それがどのような構造になっているかについて以下のようなモデルを考えました。
第3層 アプリケーション
第2層 文字入力
第1層 OS
これはほぼ妥当なものとして受け入れ可能なのではないかと思います。その上で、文字入力に関しては次のような2層分割を考えました。
第2上層 漢字かなまじり文作成
第2下層 キー入力
このようにした場合、各層での技術や製品の例をあげると次のようになります。
第3層 ワード、一太郎、エクセル、ブラウザ・・・
第2層 Japanist、MS-IME、ATOK、Scim-Anthy・・・
第1層 ウィンドウズ、マッキントッシュ、リナックス・・・
親指シフト自体はこの構造化では第2下層に属するものでしょう。いわゆる親指シフトのエミュレーターはこの層の技術です。Google日本語入力やJapanist、携帯電話入力での予測変換自体は第2上層の技術です。
すでに述べたようにこうした構造化の良いところは、各層間のインターフェースの整合性だけを確保しておけば、技術的改良は一つの層の中だけで考えればよいことです。技術のユーザー側から見れば、一つの層での優れた技術を使いたいと思えば、それは上下層にあるどの技術とも組み合わせ可能なことです。
だから、親指シフトが良いと考えるユーザーは、どのアプリケーション、どのOSでも親指シフトを使いたいのは道理に適っています。
親指シフトの歴史は、上記のような意味で親指シフトが使えるところを拡大してきた歴史なのではないでしょうか。専用日本語ワープロの世界は第1層から第3層までそれぞれ一つずつを選んで選択の余地がありませんでした。それが今では、一つのOSでは親指シフトを実現する仕組みができていれば、事実上すべてのアプリケーションで親指シフトが使えます。使えるOSが増えてきて、事実上すべてのパソコンで親指シフトは使用可能であることもこれまで何回も言ってきました。
日本語入力の問題を上記のような枠組みで考えると見通しが良くなると私は考えます。そのことは日本語入力への関心、そして親指シフトへの評価を高めるものだと私は信じています。
さて、上記を述べた上で、もう一つ考えたことがあります。Google日本語入力のトップページhttp://www.google.com/intl/ja/ime/には以下のような画像があります。
これを見ると、ウィンドウズとマッキントッシュの違い(ウィンドウのデザインなど)を除くと、同じものになっています。つまり、Google日本語入力を使うユーザーはOSにかかわりなく文字入力では同じインターフェースで仕事をすることになるわけです。
こうした例は他にもあげることができます。ジャストシステムは日本語入力プログラムのATOKをウィンドウズだけでなくマッキントッシュ、リナックスでも提供しています。基本的にはどのOSでも同じ日本語入力のインターフェースを使うことができるわけです。これは日本語入力という技術を提供する会社としての見識だと思います。親指シフトを正式にサポートしてくれればもっと良いんですけどね(笑)。
そういう意味では、日本語入力の問題は実はOS等よりも重要な問題で、インフラ的要素が強いと言えるのではないでしょうか。だから、私の考えた構造でも、実は文字入力はOSの下に置いた方が適切なのかもしれません。
私の考えたモデルが現実をうまく反映しているかどうかはよく分かりません。でも、こうしたことを考えるきっかけを作ってくれたという意味でGoogleやBaiduには感謝します。
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