Re: AZIK に興味(@パソコン・メモメモ備忘録)
キーボード入力の使いやすさの評価はどのようにすれば良いか。
http://d.hatena.ne.jp/umonist/20091113/p1
キー 入力速度の評価で、打鍵数だけではなく、各指の移動についても考慮(単純な距離だけでは駄目そうだが)するのはいい考えかと思う。あるキーからあるキーに 移動するのにかかる時間や、失敗率を考慮することは重要そうだ。後、両手を並列に動かすことも考えないといけない。一大研究はできそう(すでになされてい るのかな)。カナ入力と親指シフトとAZIK で速度比較するとどれなんだろうなぁ。熟練度にもよるとは思うが。
キー ボードによる文字入力の使いやすさを分かりやすい形で評価することは結構難しい課題です。なぜかといえば、成果物(文章)を得るためのプロセスにはさまざ まな技術がかかわるからです。ざっと考えただけでも、キーボードの配列やかな漢字変換の優劣などが関係することは確かでしょう。
こうした中で、キーボードについてだけ評価する方法を考えるのは容易ではありません。実際にそれなりの人数で使ってみて比較するといっても、キーボード以外の要因をコントロールした上でとなると比較実験の設計は難しい気がします。
例えば、パーソナルワープロ専用機はなやかりしころにあったワープロコンテストでは親指シフトは常に上位の成績でした。例えば親指シフト普及のための団体の日本語入力コンソーシアムのサイトにある文書http://nicola.sunicom.co.jp/spec/demand.htmでは、そのような記述があります(「(3)NICOLA配列キーボードの実績 1 ワープロコンテスト」参照)。これに対しても、キーボード配列の違いだけでなくかな漢字変換のやり方が関係しているのではないかとの見方もあります。
キーボード以外の条件をなるべく揃えて比較した結果は上記の文書中にある「(2)NICOLAキーボードによる入力速度 1 練習時間別入力測定調査(1983年)」があり、それでは親指シフトが他の入力方法に比べて優位であることが示されています。
上記のような比較方法はいずれにしても設計が難しく、コストもかかることは容易に予想されます。実際、こうした比較はその後あまりされていないようです。
比較方法のもう一つのアプローチとしては、理論的なモデルをつくり、それで比較するというものがあります。この場合、そのモデルの理論的、実際的な妥当性をきちんと詰めないといけないし、使われるパラメーターについても吟味が必要です。
こうした難しさがある一方で、理論的モデルは基本的に机上でつくることができ、柔軟に変更ができるので、さまざまなモデルで試すことができます。これは大きな利点で、特にプロトタイプ的な新しい方法の評価では威力を発揮します。
このような方法による親指シフトの評価としては、同じ文章を入力するのに必要な打鍵数の比較があります。前述の日本語入力コンソーシアムの文書でも 「表2」では、親指シフトでの打鍵数を1とすると、JISかな入力では1.1、ローマ字入力では1.7と差があることが示されています。
これは妥当な結果ですが、それでも打鍵数以外の事項が考慮されていないという議論はあります。評価のモデルとしてはやや単純化しすぎているという指摘であり、私ももっともなところがあると思っています。
最初の引用にあるような指の移動距離を一つの指標としてみる試みは、手前味噌ではありますが私も考えてみました。
キーボードによる文章入力の容易さ比較のための方法論試案
キーボードによる文章入力の容易さ比較のための方法論試案(2)
キーボードによる文章入力の容易さ比較のための方法論試案(3)(付論)エクセルファイル解説
まだ方法論的には洗練されていませんが、新しい視点を一つ付け加えられたと思っています。これまた手前味噌のものですが、私の考えた「親指シフトキーボードによるアラビア語入力方法試案(文字のキーへの割り付け)」でもこの評価方法を使っています。
良い刃物をつくるには良い砥石が必要です。もちろん刃物の評価は実際に使ってみてみないと分かりませんが、良い砥石で磨かれたものでないと良い刃物はできません。評価方法というものは刃物に対する砥石のようなものであると私は思っています。良い刃物をつくるためにも良い砥石を用意することは大切なことです。
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