Re: 勝間和代さんに物申す 親指シフト(@司法書士小林亮介の日々勉強)
親指シフトを使わない理由は何なのだろうか。
http://sihoukobayashi.blog95.fc2.com/blog-entry-415.html
親指シフト自体は、私も、10年以上前から知っていた。
しかし、今まで使ったことがなかったし、使おうとも思わなかった。
それはなぜか?
たしかに、日本語の入力方法としては、優れているかもしれない。
しかし、グローバルスタンダード(日本語の入力方法なので、ジャパニーズスタンダード?)
ではないところに問題があると思う。親指シフトを極めてしまうと、自分のパソコンではないパソコンを使う際に、
逆に入力に不便を感じてしまうのではないだろうか?
もちろん、2つの言語を操るバイリンガルがいるのだから、
ローマ字入力またはかな入力と親指シフトの両方で素早く入力できるようになるのかもしれないが、
それには多大な努力が必要なのではないだろうか?また、万一、親指シフトが絶滅した時のことも考えておかなければならない。
現在は、親指シフト専用キーボードや親指シフトを使用するためのエミュレーターが存在しているようであるが、
それらが存在しなくなった場合、親指シフトを使えなくなってしまう。
以前は、親指シフト専用のワープロやパソコンが存在していたようであるが、
現在は存在しない。
親指シフトは絶滅危惧種と言えるのではないか?
親指シフトを使わない理由を書かれています。これにはいくつかの論点があると思いますので、以下分けて論じます。なお、最初にお断りしておきますが、今日の私の書き込みは上記引用を書かれた方に対する批判ということではありません。むしろ、世間一般で考えられている親指シフトに対してのぼやっとした疑問に答えるのにちょうど良い材料になると思うので引用させてもらったと考えてください。
1. 親指シフトがグローバルスタンダードでない
グローバルスタンダードの定義をきちんとしないといけないとは思いますが、確かに世界的に使われているというものでないのは確かです。しかし、それを言えばいわゆるJISかなキーボードだってグローバルスタンダードではありません。五十歩百歩の議論をするつもりはないですが、日本語を使うという時点ですでに世界全体で通用するものでないのは同じといえましょう。
もっと言えば、英語キーボードだってグローバルスタンダードではないはずです。なぜなら、英語を使わないでコンピューターを使うことは、全世界で普通に行われていることだからです。
あえてグローバルスタンダードという言葉にこだわるとすれば、それはユーザーを取りまく環境(使っている言語はその中でも特に重要な要素でしょう)にコンピューターのハードやソフトを適応させるように使っているという現実なのではないでしょうか。
文字の入力方法はその一つの例で、さまざまな言語でいろいろな工夫がされています。多くはハードウェアとしてのキーボードはいわゆる英語キーボードを使っている(この事実を指してグローバルスタンダードと言いたいのだったら別に反論はしませんが、つまらないことだと私自身は思います)ようですが、私の知る限りでは「靴に足を合わせる」という形になっていることが多いように思われます。
2. 自分のものでないパソコンを使うときに困る
その通りです。私自身も、家で使うパソコン以外はローマ字入力を余儀なくさせられています。でも、多くの親指シフトユーザーはそれでも親指シフトがあった方が良いと考えて使っています。そのために、コストがかかったとしても、また、手間隙をかけなくてはならなくてもです。
もちろん、どこに行っても親指シフトが使えるようになれば親指シフトユーザーとしてこんなにうれしいことはないわけです。実際、親指シフトキーボードと必要なソフトをまとめて持ち歩いて出先のコンピューターにつないで親指シフトを使えるようにするといった工夫をする人もいます。
文字入力は人間とコンピューターの接点(インターフェース)の最前線です。いかに技術が進歩したとしても、人間から離れることはあり得ません。一方、コンピューターを使うときのデータやソフトウェアは、どこにあってもよく、実際にデータをネットワークの向こう側に置いてしまう(分かりやすい例ではGmailがそうでしょう)ことや、ネットワークの向こう側にあるソフトを使って作業をする(Googleドキュメントのように)のは普通になっています。いわゆるWeb2.0の考え方です。それでも、ヒューマンインターフェースとしてのキーボードは人間から離れられません。だから、自分の使いやすいものを選ぶ、さらには社会的にも良いものを選ぶことが大事なのです。
料理人はどこに呼ばれて仕事をしに行くにしても包丁だけは持っていくものです。カウボーイは馬を乗り換えても鞍は変えないものだと言います。インターフェースとなる道具に対する接し方はこのようなものなのです。だから親指シフトの筋金入りのユーザーは、どこでも親指シフトが使えるように用意をするのです。例えば、作家の曽野綾子さんは国内外に仕事場があり、そのどこにも親指シフトが使える環境を用意しているそうです。そこまでできる人はそう多くはないでしょうが、そのようにしている人がいるのも事実なのです。
3. 親指シフトは絶滅危惧種か
親指シフトの専用キーボードはパソコン用では現役で販売されているものは、私の知る限り2種類です。親指シフト専用キーボードがついているノートパソコンも2~3種類のようです。こうした状況を見れば、親指シフトは絶滅に向かっていると判断されるのも間違いではないかもしれません。
しかし、このような表面的な現象だけを見てはいけないと私は考えます。親指シフトが使える環境は実は広がっているのです。なぜかといえば、ワープロ専用機の時代は親指シフトを使うということは事実上、富士通のワープロ専用機OASYSを使うということに等しいものでした。かりに東芝のルポの機能が優れているのでそれで親指シフトを使いたいと思っても不可能でした。
OASYSに限らずワープロ専用機という製品ジャンルは消えてなくなってしまいました。一方で、PCは特にハードウェアはデファクトスタンダードの下で、大きく成長しました。これこそグローバルスタンダードとよべるものでしょう。親指シフトはこの中で、ずっと使える環境を維持してきました。現在は、OSで言えば主要なウィンドウズ、マッキントッシュ、リナックスで実用的に使える環境があります。つまり、親指シフトは使おうとすれば事実上、ほとんどのパソコンで使えるのです(キーボードが固定されているノートパソコンについては話は別です)。
考えてみれば親指シフトは約30年にわたり、その基本構造を変えずに生き残っているのです。この間にOSがどんなに変化したかを考えれば、それは驚くべきことなのではないでしょうか。つまり、親指シフトこそがドッグイヤーと言われる変化の激しい環境の中でサバイバルに成功しているのです。もちろん、これが未来にわたって維持できるかは分からないわけですが、少なくとも絶滅危惧種だという見方は当たっていないと私は思っています。
もしかすると、勝間さんは、これらのことを考え、親指シフトがもっと普及するよう、
自らの著書などを利用し、積極的に紹介しているのかもしれない。
勝間さんがどのようなお考えなのかは私にも分かりません。ただ、親指シフトのコミュニティーとしては、親指シフトを使い続けられる環境を維持していくためには何らかの努力が必要だとみんなが感じているのだと思います。自分が使い続けられる環境を維持していくためには、それなりのエコシステムができないといけない、そのためにはユーザーの仲間を増やすことが最も大事な行動であると私は思っています。
なお、グローバルスタンダードということで言えば、親指シフトを日本語以外に使うということを考えられます。具体的な実装までは行っていませんが、少なくとも可能性を示すことはできたと思っています。これも親指シフトのポテンシャルを示すものだと考えています。
親指シフトを世界に
http://homepage3.nifty.com/gicchon/sub14.htm
をご覧ください。
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