Re: Re: Re: Re:親指シフトレポートのコメントへの返信(@fuzzy Weblog@hatena)
親指シフトのゴールは何か、そのために必要なことは何か。
http://d.hatena.ne.jp/fuzzy2/20080319/p6
様々な新しい入力方法を開発されるのはいいのですが、次のようなゴールを実現しないと単なる自己満足で終わってしまいます。
1. JIS規格、ISO規格の採用を実現する。
2. Windows/MacOSの標準搭載を実現する。
(中略)
一度覚えた方法を一生使えること、どこでも使えることを保障するためには、最低でもJIS規格の登録を目指すべきです。過去の特殊な入力方式はそのことを怠ったために事実上市場から消滅したのです。
文字入力の方法は優れて個人的な「好み」(あえてこの言葉を使います)に左右されるものです。その理由が効率だったり、使いやすさだったり、あるいは単に人と違うものを使いたいだけだったりするのかもしれません。その意味では、勝手に自分の好きなものを使えばいいだけで、何も規格のことなど考えなくても良いのかもしれません。
しかし、一方で技術は社会的な広がりを持つものなので、使用の規模が大きくなることによる社会的な利益も当然あります。使用者が多いことによる教育の機会(形式的に教えるということだけでなく、使う人が周りにいるというによる教育効果も含めて)の増加およびそのためのコストの低減はまず考えられる利益です。また、技術が将来、役にたたなくなる可能性が少ないという世間からの評価でもあります。
そういう意味では、ここで言われていることは原理的には妥当だと考えられます。技術が社会的に受け入れられるということの典型的な証だからです。
では、上記の基準に照らして親指シフトはどこまで行っているのでしょう。
1.の公的規格に関しては、確かに親指シフトはJIS規格とはなっていません。キーボード上の文字の配列に関してJIS規格になっているのは、私の知る限りでは英文字(アルファベット)と、いわゆるJISかな配列だけだと思います。かなについては、一時期、新JIS配列というのがありましたが、使用実態がないということで廃止されています。このあたりの経緯は、親指シフトの生みの親である神田さんのサイトに書かれています。
http://www.ykanda.jp/input/jis/jis.htm
なお、文字配列そのものではないですが、コンピューターへの日本語入力、特にかな漢字変換については、「仮名漢字変換システムの基本機能」がJIS X 4064という規格として制定されています。この規格には、NICOLA配列(日本語入力コンソーシアムが改良した親指シフト配列)が、規格の一部ではありませんが参考として付属書になっています。日本語入力コンソーシアムは配列をJIS規格として登録するように努力したようですが、最終的には上のような扱いになったとのことです。
そもそもJIS X 4064の守備範囲はかな漢字変換のシステムが備えるべき基本的な機能なので、文字の配列に関しては守備範囲外で、そこはやりたい人が勝手にやりなさいということなのかもしれません。
結論をいえば、確かに親指シフトの文字配列はJIS規格とはなっていません。かな文字の配列という意味で、JIS規格になっているのはいわゆる「JISかな」だけです。ただ、大事なことは親指シフトは、公的な規格となっているJIS X 4064に適合している例として認知されているという事実です。
ですから、1.の基準に照らしていえば、そこまでは行っていないものの、かなり接近できたと言えるのかもしれません。
2.については、OSの「寿命」は入力方法のそれよりも短い(これまでのOSの歴史から見れば そうなっています)ことから、もう少し一般的に、「実際に広く使われているOSでの標準搭載」とした方が良いかもしれません。
確かにウィンドウズやマッキントッシュでは、何らかの形でソフトウェアを追加しないと親指シフトを実用的に使うことはできません。でも、リナックスでは多くのディストリビューションでデフォールの日本語入力であるSCIM-Anthyでは、当初から親指シフトを選択できるような設定になっています。これは、もう標準搭載といってもよいでしょう。
ウィンドウズやマッキントッシュではすでに述べた通り、何らかの追加が必要になります。ただ、そのための壁は最近、ずっと低くなってきていると見ることができます。いずれにしても、実際に広く使われているOSでは(それだけでなく、携帯電話などでも外付けキーボードを使えば)親指シフト使用に対する障害は少なくなってきていると私は考えます。
これらを総合してみると、親指シフトに対する社会的な認知は決して低くないと考えるべきだと私は思っています。
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