Re: 中国語入力の「DE」(@漢直ノート)
中国語のキーボード入力の特徴は何か。親指シフトは役立つか。
http://taffy632.blog24.fc2.com/blog-entry-319.html
中国の配列を調べた時に、まっさきに気になった運指も「DE」でした。
中国で一番頻度が高い漢字は「的」です。
中国語は文字の数が多いので、キーボードとの相性はあまり良くないようです。そのことの裏返しとして、中国語入力については、さまざまな考え方があるようでいろいろなアイデアがネットを見ると見つかります。言葉を変えて言えば、現在の入力の方法が必ずしも最適なものであるとは言えないのかもしれません。
どのような方法をとるにしても、「楽に使える」というのが(それがどのような意味であるにせよ)大事なポイントになります。例えばよく使われる文字を入力するのが簡単だというのは重要な基準だと考えられます。
中国語の入力に親指シフトを使ったらどうかというのは一つのアイデアとして有効であり、実際に理論的モデルが提示されています。私のサイトにある、ケーススタディー(中国語)
http://homepage3.nifty.com/gicchon/sub149.htm
にもそのようなアイデアを紹介しています。
その内の一つである、横浜国立大学の村田忠禧さんが考えた入力方法は、
http://kks.ed.ynu.ac.jp/sub03/murata/murata-chinastudy02.pdf
http://www.kks.ed.ynu.ac.jp/sub03/murata/chineseinput.htm
に説明されていますが、とても面白いものになっています。
基本的には音声をベースにしたものですが、頻出の漢字についてはクロスシフトのワンタッチで入力ができるようになっています。「的」はまさしくそのような漢字で、右手の人指し指のホームポジションという一等地が与えられています。
音声を重視したやり方ながら、漢字を直接入力するということも可能というやり方で中国語の音声と表記の特徴を生かしたものとなっています。こうしたことが可能になったのも、コンピューターによるソフト的制御をうまく使ったからで、タイプライター的(ハード的)な制御にとらわれていては考えられなかったものです。
ソフト的制御は必ずしも親指シフトに限ったことではありません。しかし、親指シフトは、親指と他の指の同時打鍵という無理のない動きを活用することにより、ソフト的制御を生かす豊かで広いベースを提供しているのです。
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コメント
トラバありがとうございます。
リンク先を拝見させて頂きましたが、頻度などのデータが詳細に乗っているのがありがたく、充実していて興味深いです。何故か中国のサイトでは漢字や指の頻度のデータをのせている所がほとんど無いので……。灯台元暗しで日本にこれほどのデータと、配列があったとは、という感じでした。
村田忠禧さんが作成した親指シフト配列を見てみると、頻度の高い単漢字がクロスシフト打鍵で一字入力出来る事に加えて、韻母・声母も、一まとまりが一打鍵で打てるようになっているのがとても良いですねえ。QWERTY配列から全く独立している所も、指の使用率の面で実用的な配列だなと。
同じページで紹介されている双打入力法も気に入ったのですが、QWERTY配列のままなのがもったいないんですよね。。
これらの配列を中国では元より日本でも使えないのは非常に勿体ないですね。
うーむ何とかならないものか……少し考えてみたいです。
投稿: みのり | 2006/04/19 11:36
みのりさん
なぜ日本語だけ、親指シフトやM式といった根本まで考えた入力方法が作られたかを研究してみるのは面白いかなと思っています。
私の仮説は、日本の技術の進歩と世界的なPC化の間にタイムラグがあったため、日本語ワープロという独自の製品ジャンルが繁栄するチャンスがあり、その中で日本語入力についても根本から考えることが可能だった、というものです。
ワープロ専用機というのがこんなに売れたのは日本だけなのではないかと思うんですが、どなたか詳しい人がいたら教えてください。
ともあれ、親指シフトはワープロ専用機がなくなっても生き残っている訳で、このしぶとさは、親指シフトの優秀さだけでなく、日本語入力という技術の性格にもよるものだと思います。
親指シフトが他の言語にも使える可能性があるというのは、「親指と他の指の同時打鍵」というのが、人の手指の運動の基本的な法則に合致しているからで、その意味でも親指シフトは根本までさかのぼって考えられているのではないかと思います。
>うーむ何とかならないものか……少し考えてみたいです。
ポイントは「実際に動くものを提示する」ことなのかと思います。これはリアル世界での仕事になるので、もちろん面倒なことはたくさんあります。技術的なこともさることながら、例えば知的所有権の問題をどうクリアしたら良いかとか、大変なものがあります。
それでもやってみよう!というようになるには、それなりの力が必要になります。どのようにすればそうした力を集められるか、難しい問題です。
投稿: 杉田伸樹(ぎっちょん) | 2006/04/19 23:03
>なぜ日本語だけ、親指シフトやM式といった
これは私も面白い問題だと思います。中国では、日本の106、109キーボードにあたる製品さえ無いようで、101キーボードが主に使われてるみたいなんですよね。なのに日本では親指シフトやM式キーボードが、今でも生産が続いているわけですから。
日本の技術の進歩と世界的なPC化のタイムラグ……なるほどある程度構想して、製品化、浸透するために丁度いい時間差があったというわけですか……。 何か鎖国の時代に江戸文化が華開いたのに似てますね(ちょっと違う??)
そういえばキーボードの配列だけではなく、「日本語変換」も日本は早くから進んでいたようで、これも中国の話なのですが、最近まで単漢字変換しか出来ないソフトも多かった(特に繁体字圏)ようです。神田泰典さんの果した役割の大きさも分かるなあと。
>例えば知的所有権の問題を
ああそうですよね。自分はソフトを作ったりは出来ないので、中国のソフトを利用するか、Unicodeが動作する「繭姫」や、「百相鍵盤 「き」」などを利用して、親指シフトで中国語を打てる設定方法が出来ないか考えてました。
でも、もしも出来たとしても、私が勝手に村田忠禧さんの配列データを作るわけにもいかないし……。うーん、でもせっかくなので、入力環境が作れるのかもう少し試してみたいと思います。
投稿: みのり | 2006/04/21 10:09
みのりさん
>中国では、日本の106、109キーボードにあたる製品さえ無いようで
そうなんですか。結局101を使うことが前提となってしまっていて、それ以外の方法を使うことを考えもしない、という状況なんでしょうね。
>何か鎖国の時代に江戸文化が華開いたのに似てますね(ちょっと違う??)
良いメタファーを考えてくれてありがとうございます。時間軸の長さの違いがありますが、面白い言い方だと思います。
>最近まで単漢字変換しか出来ないソフトも多かった
これでは効率が悪いですね。菅野さんのペーパーには中国語は単語単位で変換することが効率がよいことが書かれています。おそらく初期の頃のハードやソフトの制約からそうなっていたのだと思いますが、日本語入力とはかなり事情が違っていますね。
>うーん、でもせっかくなので、入力環境が作れるのかもう少し試してみたいと思います。
リアル世界を動かすことは大変ですが、やる価値はあると思います(と無責任にけしかけている)。研究やデモといった目的ならばまだしも、実際に実用的な使い方をしてもらうとなると解決すべき問題はたくさんですね。
投稿: 杉田伸樹(ぎっちょん) | 2006/04/21 23:55